新・駅前そぞろ歩記
室町時代に太田道真(どうしん)・道灌(どうかん)父子によって築かれたといわれる岩槻城。その城下町は江戸時代には日光御成(おなり)道の宿場町として栄えました。また日光東照宮造営に携わった工匠が人形作りを始めたのも岩槻。岩槻は人形の町なのです。さらに明治初期の埼玉県庁は岩槻にあり、埼玉の中心的な役割を担っていたのです。そして現在。この春、東武アーバンパークラインに大宮・岩槻・春日部を停車駅とする急行列車が誕生。また、岩槻駅では橋上駅舎化に向けた工事が進むなど、何かと話題も豊富です。
岩槻駅前に出ると、ロータリーには高さ8mのからくり時計。定刻になると曲が演奏され、赤い着物姿の人形たちが現れて踊ります。人形の町・岩槻ならではのお出迎えです。
駅前通りを南へ向かうと日光御成(おなり)道との交差点。岩槻の城下町は宿場町としても栄え、街道沿いには蔵造りの商家が近年まで残されていました。現在は市宿(いちじゅく)通りとして再整備。道路拡幅に合わせて建物をセットバックして歩道空間を広げ、レトロな街灯を配するなど、モダンな宿場町をイメージした街並みづくりが進行中です。
市宿通りに建つ岩槻郷土資料館では、岩槻の歴史や暮らしの道具を紹介。岩槻城のジオラマも必見です。また同館の建物は昭和5年建築の岩槻警察署旧庁舎を使用。天井の梁(はり)や窓に見られるアーチ状の造形や、アールデコ様式の装飾が随所に施されています。
岩槻藩の儒者・児玉南柯(なんか)が創設した藩校・遷喬(せんきょう)館。教場(きょうば)の建物が藩校当時の姿に解体復元されています。藩校の建物が現存しているのは全国でも珍しく、埼玉県ではここだけです。
建物ではありませんが、復活したものがもう一つ。古典落語「たらちね」にも登場する岩槻ねぎです。葉がとても柔らかく、白い部分に甘みが強いのが特徴ですが、その身が柔らかいことから積み重ねができず、長距離輸送に向かないことから市場から姿を消していました。その幻のねぎが、近年になって復活、岩槻区を中心に20以上のお店で食べられるようになりました。
岩槻城址公園は自然林が多く森林浴も楽しめ、桜の名所としても知られる市民の憩いの場です。菖蒲(しょうぶ)池に架かる八ツ橋は、一番のビュースポット。また、やまぶきが岩槻区のシンボルフラワーとなったことから園内にも植樹。4月から5月にかけて、可愛らしい花を咲かせます。
園内にはかつての岩槻城の城門だった黒門が現存します。明治以降は埼玉県庁や県知事公舎の正門として利用されましたが、後に城址公園に帰ってきました。その隣には人形塚が建てられ、毎年秋には人形供養祭が開催されます。
また、かつて昭和を駆け抜けた東武の特急電車1720系(デラックスロマンスカー)の先頭車両も展示。車内も当時のままに保存され、自由に乗車でき、子ども達はもちろん、当時を懐かしむ大人にも人気のスポットです。
鉄道ファンにお薦めのスポットがもう一箇所。「時の鐘」近くから、東武線の線路に向かって続く「武州鉄道の小径」です。1924〜38年という短い期間ですが、蓮田〜岩槻を経て神根(現・川口市)まで走っていた武州鉄道の廃線跡を歩くことができます。
岩槻城の歴代城主の信仰厚く、徳川家康も江戸城の鬼門除け(きもんよけ)として祈願したのが、岩槻の総鎮守・久伊豆(ひさいず)神社。「子育て明神さま」とも呼ばれ、境内には子どもが健康に育つように祈念する健育塚があります。また神社には埼玉県の「ふるさとの森」と「自然百選」に選ばれた豊かな森が広がっています。
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