新・駅前そぞろ歩記
日光の隠れ里のように開けた「湯西川温泉」。かつて源氏に敗れた平家の落人(おちうど)たちが、この豊かな〝いで湯〞の地を発見し、心と体を癒やしたという伝説のように、いまも私たちを温かく迎えてくれます。訪れるなら、特に美しい雪景色の頃がイイ。町中が「かまくら祭」で彩られ、雪と灯の幻想的な世界が待っています。〝スノーシュー〞と呼ばれるウインターレジャーも人気で面白い。由緒ある温泉文化を背景に、今日的な楽しさも生き生きと満喫できるでしょう。
「湯西川温泉駅」は、山岳のトンネル内にある珍しい駅。神秘的で、ここから始まる休日のプロローグといった感じです。そこからバスで行く「湯西川温泉」は日光国立公園の中でも、古くから〝平家落人伝説〞の郷として知られます。この山深く心地よい温泉の湧く地は、かつて壇ノ浦の戦いに敗れ、逃げ延びてきた平家の人々には、まさに安住の理想郷に思えたことでしょう。その歴史的味わいも大きな魅力のひとつです。
たとえば「平家の里」は、史実に基づき落人の暮らしを復元したテーマパークです。自然庭園には、大小9軒の茅葺き屋根が昔ながらに点在し、それぞれに平家落人の生活様式や生き方が保存展示されていて興味深い。軽食でひと休みしたり民芸品に出合ったりと、温泉街を代表する見所です。
しかも、ここをメイン会場に、恒例の〝かまくら祭〞が開催中。真っ白な雪に包まれた世界では、いろいろな伝統イベントを鑑賞したり、〝かまくらバーベキュー〞や〝かまくらカクテルバー〞でグルメしたり…みんな華やいで和気藹々(わきあいあい)と楽しそう。特に日も暮れ、ライトアップされた時はもう圧巻! 美しさに息をのみます。
また、近くの「沢口河川敷」も見逃せません。ここでは無数の〝ミニかまくら〞が火を灯し、川辺一帯を埋め尽くします。この幻想とロマンにあふれる光景は、〝日本夜景遺産〞にもなっています。
まさに雪の祭典は、町をあげてのおもてなし。商店街もこの時期は、〝雪のぼんぼりと雪だるま〞を飾り、特別に温かいサービスをしてくれます。
温泉街として「湯西川」は比較的こじんまりとした佇まい。それだけに豊かな自然や古い町並みが徒歩圏内に点在して、散策向きといえるでしょう。商店街で見つけた「平家落人民俗資料館」は、充実した観光ポイント。この土地に住む人たちに代々伝わってきた、平家ゆかりの品々が愛着を込め展示されています。また街道をちょっと寄り道してお参りした「高房神社」には、素晴らしい彫刻を施したお社があり、16世紀の建立とか。古くから人々の信仰を集めてきたと聞きました。あたり一帯は広々とした「栗山森林公園」。その木々の奥には「天楽堂(てんがくどう)つり橋」が景観に迫力を添えています。見下ろす湯西川渓谷はスリル満点ですが、つり橋はビクとも揺れませんから、ご安心のほどを。
一方、町を歩いても若いカップルの姿が目立つのは、最近注目されている〝スノーシュー〞のためかもしれません。これは現代風にアレンジされたかんじきを履き、雪原をトレッキングするスポーツです。かまくら祭の沢口会場で体験ツアーに参加することができます(詳細はP12参照)。湯西川は、新しい魅力にも目を向けているのでしょう。「水の郷観光センター」には家族向けのスノーパークができ、夏には国産初の水陸両用バスで話題を呼びました。
駅に隣接した「道の駅 湯西川」も外せないスポット。観光案内・食堂・お土産処もそろいます。2階には温泉もありますから、また〝い〜い湯〞につかれます。ポカポカ、ツルツルのお肌で、旅の思い出を胸に帰りましょう。
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