新・駅前そぞろ歩記
“東洋最大規模のマンモス団地”と呼ばれた松原団地。その最寄り駅として昭和37年、東武伊勢崎線の草加駅と新田駅の間に開業したのが松原団地駅です。その2年後には獨協大学が開学し、草加は文化都市として発展してきました。そこで「大学のあるまち」を想起させる新しい駅名を望む地元の声に応え、国指定の名勝地・草加松原の観光PRも兼ねて、この春、松原団地駅改め、獨協大学前〈草加松原〉駅が誕生しました。
獨協大学前〈草加松原〉駅は、トラス屋根を活かして自然光を取り入れた明るいコンコース。駅ナカ店舗「EQUiA(エキア)松原」も、きらびやかさを演出しています。西口には松原団地が再整備されたエリアや獨協大学のキャンパス。そして東口から3分も歩くと草加松原の遊歩道に出ます。
旧日光街道の綾瀬川に沿った松並木は、江戸時代から「千本松原」と呼ばれる街道の名所で、画家や文人が多くの作品に描き残しています。ところが高度成長時代になると、クルマの通行量の増加による排気ガスの影響で松が激減。そこで市民が中心となって補植を始め、現在は東京スカイツリー®の高さにちなんだ634本まで回復。また松並木から車道を外して石畳の遊歩道に整備しました。そして平成26年、松尾芭蕉の「おくのほそ道」に関連する10県13件の風景地が、いまなお往時の雰囲気を伝えるものとして国の名勝に指定されましたが、その中に草加松原が選ばれたのです。
約1.5キロの草加松原遊歩道でひときわ目を引くのは、交差する車道に架けられた太鼓橋の「矢立(やたて)橋」と「百代(ひゃくたい)橋」。和風の佇まいが江戸時代の日光街道の趣きを感じさせ、橋の上からの松並木の眺めも抜群。遊歩道の終点は、昔の舟運の跡を整備した札場河岸(ふだばかし)公園です。園内には木造五角形の望楼が建ち、展望台からは綾瀬川と松並木が一望。望楼の下には、千住を見返りながら「おくのほそ道」に思いを巡らす旅姿の芭蕉像が立っています。また公園奥では明治の遺構で二連アーチ型の煉瓦造り水門・甚左衛門堰(じんざえもんせき)を見ることができます。
草加松原から松原大橋を通って綾瀬川左岸に渡ると草加市文化会館。その1階に併設されているのが伝統産業展示室「ぱりっせ」です。煎餅や皮革製品など、草加の伝統的な産業の歩みや製品の製造過程などを楽しみながら学べるギャラリー&ショップで、定期的に煎餅の手焼き体験やレザークラフト体験も行っています(要予約)。
文化会館の隣には公園「冒険松原あそび場」。ここには既製の遊具もなければ「ボール遊び禁止」「大声禁止」などのルールもありません。泥んこ遊びや基地づくりなど、子どもたちが自由にやりたい遊びができる公園です。地元NPOと草加市の協働で子どもたちを見守ります。
草加松原からさらに旧日光街道を草加駅に向かって歩くと、なんと江戸時代の町屋建築が保存されています。現在は無料休憩所「草加宿神明庵(しんめいあん)」として公開。ここでお茶の接待を受けながらお薦めの観光ポイントを聞いたりすると、気分はすっかり江戸時代の日光街道を往(い)く旅人です。
草加宿の名物といえば草加煎餅。生地作りから焼き上げまで、すべてを行う「丸草一福」本店では、工場見学や手焼き体験ができます(要予約)。お米の旨味を失わずに草加煎餅本来のぱりっとした食感に仕上げるため、箸で何度も生地を返しながら押し瓦で押して丁寧に焼き上げるのが特徴。自分で焼き上げた熱々煎餅の味は格別です。
草加松原を散策した後は、駅東口の「湯屋処まつばら」へ。露天風呂や大浴場など15種類のお風呂とサウナに何回でも入れるスーパー銭湯です。
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