新・駅前そぞろ歩記
東武伊勢崎線 鷲宮駅から歩いて10分弱の鬱蒼(うっそう)とした森の中にある鷲宮神社は、関東最古の大社といわれます。 古代に素焼きの土器を作る土は師部(じべ)の移住地と伝えられ、「土師の宮」の「ハジ」が「ワシ」に転訛(てんか)して「鷲宮」になったという社伝があります。以降、各時代ごとに有力者から寄進を受けて長い悠久の時を刻んできた神社が、またひとつ時を刻む新年。元日の初詣客の数は、埼玉県内では大宮の武蔵一宮 氷川神社に次ぐ人気です。
現在は久喜市の一地域となりましたが、鷲宮町は鷲宮神社の門前町として古くから栄え、水利の便も良好だったため、かつては肥沃な田畑のある農耕地帯でした。鷲宮駅で下車して東口へ出ると、鷲宮の史跡巡りや観光に便利なレンタサイクル店があります。自転車でそぞろ走ることにしましょう。
まずは鷲宮の歴史を学ぶべく久喜市立郷土資料館へ。縄文土器や埴輪など古代遺跡の発掘資料や、鷲宮神社に伝わる古文書などが展示されています が、ひときわ目を引くのは国指定重要無形民俗文化財である鷲宮催馬楽神楽(さいばらかぐら)の紹介。関東神楽の源流とされ、催馬楽とは平安時代に流行った歌謡で、神楽の各曲目ごとに歌われます。
資料館の近くを流れる葛西用水路沿いの両岸にはコスモスやポピーが栽培され、往復約10㎞にわたって秋はコスモス、春はポピーの花で彩られた水風景が壮観。コスモスふれあいロードと呼ばれ、ウォーキングやジョギングの定番コースとしても親しまれています。
この道を南下すると西大輪(にしおおわ)という地区に入ります。この辺りに広く分布するのが中川低地の河畔砂丘群。大量の砂が平安時代から室町時代にかけて強い季節風で古利根川沿いに吹き溜められて形成された、全国的にも珍しい内陸性の砂丘です。西大輪神社(雷電社)の境内は西大輪砂丘の中でも最も保存状態がよく、砂の堆積状況がよく分かることから、平成28年に天然記念物として県の指定文化財になっています。
鷲宮神社は関東鎮護の神として鎌倉幕府や足利氏、後北条氏など多くの武将の崇敬を集め、江戸時代には徳川家康から四百石という破格の領地を寄進されています。境内は拝殿と2つの本殿があり、奥には鬱蒼とした鎮守の森が広がり、清浄な空気が満ちあふれています。光天之池(みひかりのいけ)は龍神が住んでいたという伝説があり、長い間埋もれていた池を平成になって復元整備したところ、池から湧き水が溢れ出て、龍のような雲が空を覆ったとかで、新たなパワースポットになっています。
拝殿の向かいに建つ神楽殿では初詣で賑わう元日に鷲宮催馬楽神楽(正しくは土師一流催馬楽神楽[はじいちりゅうさいばらかぐら]) 12座が奉演されます。この神楽を楽しみに遠方から初詣に参詣する人も大勢。ちなみに元日の次に神楽が奉演されるのは年越祭(2月14日)です。 また、毎年大晦日~1月3日は鷲宮神社の大駐車場を閉鎖して初売りを開催。アニメのご当地限定グッズの販売や久喜市内の飲食店も出店し、土産・食事・買い物で大いに賑わいます。
さて、せっかくレンタサイクルを利用するなら、足(ペダル?)を延ばしてサトエ記念21世紀美術館を訪ねてみましょう。 徒歩なら鷲宮駅からも1つ先の花崎駅からも、徒歩20分です。ここは日本庭園と彫刻と絵画の美術館。庭園では樹々と彫刻が織りなす表情が爽やかな開放感を演出しています。また小川で泳ぐ鯉は人にとても馴れており、手を叩くとエサをねだって集まってきます。館内では『没後20年 玉之内満雄展~向日葵に固執した魅惑の世界~』を開催中です。
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