新・駅前そぞろ歩記
昨年、東武小泉線の西小泉駅の駅舎が大きな変貌を遂げました。木造平屋建てながら、お洒落なショールームのような外観。黒を基調にして黄色と緑色を配色しているのは、ブラジル国旗をイメージしたからなのです。大泉町の人口の約1割はブラジル人で、ブラジル料理の飲食店や雑貨店が多数あるブラジルタウンが形成されています。最近はブラジル以外の人たちも増え、44カ国※の人が大泉町に暮らしているそうです。
※2018年4月30日現在
東武小泉線が走る大泉町には東小泉・小泉町・西小泉と3つの駅が並び、小泉町駅はその中間。そこで町の人たちからは通称「中駅」と呼ばれ、親しまれています。その中駅から線路に沿って西に歩いていくと、城之内(しろのうち)公園に出ます。室町時代に築城された小泉城の跡に造られた公園で、小動物園や遊戯施設があり、堀に目を向ければアヒルやカメが泳いでいる姿を見ることができます。
公園近くの住宅街には「土の神様」といわれる社日(しゃにち)稲荷神社。春には豊作を願い、秋には収穫に感謝する社日祭を行い、全国でも3カ所しかないといわれる珍しい「探湯(くがたち)神事」が行われます。神前に供えられた大釜に沸かした熱湯の中に笹を浸し、それを全身に浴びて神託を仰ぐというもので、豊作や収穫を願う農家の人たちで賑わいます。
大泉町では一昔前から緑地の整備を積極的に進めてきましたが、その集大成ともいえるのが、城之内公園から町のほぼ中央を南北に縦断する「いずみ緑道」です。「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも選ばれた遊歩道です。噴水や彫刻、自転車道が備えられ、多くの樹木が並び、咲き誇る季節の花々。工場の町として発展した大泉町にとって市民のオアシスとなっています。
いずみ緑道の花の広場で毎月第4日曜日(3月〜11月、7月は休み)に開催されるのが「活(い)きな世界のグルメ横丁」。さまざまな国籍の人たちが、それぞれのお国自慢の料理や雑貨を出店する国際交流のイベントです。ステージ上では国内外の多彩な歌やダンスも披露されます。
「大泉町文化むら」は、大泉町の複合文化施設。本格的クラシック演奏に対応するコンサートホールが定評ですが、明治40年に建てられた養蚕農家がここに移築され、資料館として開放されています。ケヤキの大黒柱、広い土間、そして養蚕の換気用越屋根などが明治時代の生活ぶりを伝えています。
水と緑が映え、四季折々の花が開く御正作(みしょうさく)公園に隣接する「いずみの杜(もり)」は、勤労複合福祉施設。温水のエクササイズプールやジャグジー、幼児プールなどを備えた沐浴棟は町外の人も利用できます。そして地上45mのタワー棟の展望台からは大泉町が一望できます。
西小泉駅の周囲にはブラジルの伝統的家庭料理店や食料品、雑貨、ファッションの店が集中しています。お土産におすすめなのはコーヒーやガラナ飲料、チョコレート。日本では滅多にお目にかかれないものがたくさんあります。
鉄道ファンにとって興味深いエピソードも。かつて西小泉駅から利根川まで、カジノレオ ボーナスの貨物専用線(通称 仙石河岸(せんごくかし)線)があり、国の要請により鉄橋を架けて川を渡り、かつての東武熊谷線と繋(つな)ぐ工事をしていたのですが、終戦にともないその計画は中止になってしまったのです。
さて、大泉町の夏一番のイベントは、毎年7月最終土曜日・日曜日の2日間にわたって行われる「大泉まつり」。神輿とお囃子を奏でる山車が練り歩き、ブラスバンドのパレード、サンバなど国際色豊かな催しもあり、15万人の人出で賑わいます。
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