新・駅前そぞろ歩記
東武東上線の下赤塚駅周辺は練馬区と板橋区の境界線が入り組んでいます。駅の南口を少し南下すると練馬区。
東上線に寄り添うように地下鉄有楽町線・副都心線が川越街道の下を走り、地下鉄赤塚駅があります。
一方、北口側は板橋区で、駅前の商店街を抜けると、そこは武蔵野の面影を残す丘陵地域。豊かな緑と古い歴史を伝える史跡が点在しています。今回は下赤塚駅北口から板橋区の緑と文化の拠点を巡ります。
関東ローム層の赤土がいたるところで見られたことから「赤塚」の地名がついたといわれる当地は、昔から自然環境の良好な土地でした。赤塚郷は中世には京都の鹿王院や武蔵千葉氏などの支配を受け、当時の歴史を伝える寺社が点在しています。
松月院は赤塚城主・千葉氏の菩提寺で曹洞宗の名刹。千葉氏の紋所「月星」を寺紋とし、関東に入ってきた徳川家康から40石の寺領を与えられた御朱印寺です。
同じく御朱印寺だった乗蓮寺は、将軍家鷹狩りの際の御休処として利用された名刹。境内に鎮座する青銅製の「東京大仏」は、建立当時奈良・鎌倉に次ぐ大きさでした。関東大震災・東京大空襲を経験した住職が、自然災害や戦争が起こらないようにとの願いを込めて、1977(昭和52)年に開眼しました。
乗蓮寺の奥に広がっているのは板橋区立赤塚植物園。本園では身近な里山の樹林を幅広く植栽し、林床には野草が可憐な花を咲かせます。万葉・薬用園では日本文化につながりのある植物を集めています。農業園では農作物の花や果実が見られます。1.2ha余りの敷地をのんびり散策できる植物園です。
そして、板橋区立美術館は東京初の区立美術館として1979(昭和54)年に開館しました。
板橋区では友好都市であるイタリア・ボローニャ市との交流を通じて絵本文化を発信していますが、いま板橋区立美術館で開催しているのが「2024イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」(~8/12)です。新人絵本作家の国際的な登竜門として知られるコンクールに入選した、78人の作品を一堂に展示。
多彩な表現、テーマ、技法による新しい絵本の表現を存分に楽しむことができます。
美術館の正面には赤塚溜池公園。かつて灌漑用水として使われていた溜池はいま、のんびり癒やされる釣り池に。公園奥には板橋区立郷土資料館。板橋区の歴史に関する資料を幅広く紹介しており、敷地内には江戸期の古民家を移築・保存しています。また、公園の丘を登ると、武蔵千葉氏の拠点とされる赤塚城跡に出ます。
旧下赤塚村の鎮守で、赤塚城主・千葉氏が勧請したと伝わるのは赤塚諏訪神社。ここには毎年2月13日夜に行われる「田遊び」という神事があり、徳丸北野神社とともに「板橋の田遊び」として国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。
かつて農村だった赤塚も、いまやすっかり住宅街。懐かしい風景を再現した「竹の子公園」や「水車公園」も、板橋区の名所です。
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